▼起業家File.055 天沼幸子さん  ファモニィ株式会社 代表取締役


 

イベント型無料保育「ママトコタイム」、子育てママ応援サービスの運営

1975年神奈川県生まれ。通訳を夢見てメイン州立大学へ留学、デンバー大学院経営学修士MBA修了後帰国し、ITコンサルティング会社、シンクタンクに勤める。2009年"家族の生活を豊かにすることで社会も幸せにして行きたい"を理念にファモニィ㈱Family+Harmonyを設立。育児ママが美容室や整体院などに赤ちゃんと一緒に安心して行けるイベント型無料保育サービス「ママトコタイム」を提供。「品川ウーマンズビジネスグランプリ2015」で最優秀賞を受賞し、ママになったら諦めるのではなく、ママになっても“できる!”が当たり前の社会を目指して活動展開中。

 


▲「JOYJOYガリバー」の店頭
▲「JOYJOYガリバー」の店頭

●幼少~大学時代―

両親が夢だった玩具店を開業、おもちゃの中で育った一人っ子。
通訳を夢見て英語の勉強開始、海外留学の強い想いが実現し米国へ‼

 
1975年神奈川県海老名市に生まれる。自宅の一階が玩具店で、プラモデルやボードゲーム、テレビゲームや文房具など沢山のおもちゃや商品に囲まれて過ごしました。玩具店開業(1980年)は両親の結婚当時からの夢で、母親が中心となって経営(父は会社に勤めながら休みの日にサポート)し、2人で試行錯誤しながら店を作り上げてきた様子を近くで見て育ちました。

個人商店ですがルービックキューブの爆発的なヒットやテレビゲーム全盛時代を迎え急成長をした時期もありました。新商品の発売日にはお店の前に長蛇の列ができ、その時の両親の幸せそうな笑顔は忘れられません。玩具店は30年ほど続きましたが、時代と共に量販店が普及し、現在は退職後に父が立ち上げた行政書士事務所になっています。母には「あなたが子供の頃はお店があったので、あまり遊びに連れて行ってあげることができずに可愛そうなことをした」と言われますが、私にとっては、玩具屋に沢山のお客さんが来てくださったことや、玩具の仕入れで問屋に一緒に連れて行ってもらったこと、クリスマス時期になると父がサンタクロースの恰好をして配達する前のおもちゃが溢れ返りワクワクしていた思い出等が沢山あります。親が働く姿を近くで見ることができた経験は自然と私の行動や考えの基礎になっていったと思っており、とても貴重な経験をさせてもらったと思っています。

小中学校は地元の公立校へ。走るのが速くてリレーの選手に選ばれたり、バトミントンなどのスポーツ好き、背が高く髪が長くていつも三つ編みにしていました。そして付いたあだ名は何故か「ラーメンマン」(笑。当時はどちらかと言うと引っ込み思案な大人しい性格で、人並みにピアノも習い、この頃は「ピアノの先生」になることを夢みるフツーの少女だったと思います。中学では吹奏学部に入部してクラリネットを担当しました(本当は人気の高いトランペット志望でしたがジャンケンで負けて…涙)。文科系の部活の中では最もハードで、ランニングや腹筋などのトレーニングで鍛えられました。

高校は両親の奨めもあって、相模女子大学付属高校を受験して入学、この頃から、ぼんやりと将来は海外ビジネスに関わりたいと思うようになり、地元のジオスに通って英語を勉強することに…、そして「同時通訳」を夢見るようになったのです。

大学進路相談で高校卒業後に海外留学を志望しましたが、両親から即断却下(未成年でもあり、将来のためにも日本の大学を卒業しておくことが必要という理由だったと思います)。そのまま相模女子短大の英文科へ進学し、留学に向けて勉学に励んだ時期で、英会話や留学に必要なTOEFLの試験勉強にも力を入れ「文法の鬼」と言われたこともありました(笑。そしてジオスの留学紹介サービスで、運良くメイン州立大学に編入というカタチで留学先が決定したのです。


▲仲良しの友達と旅行に
▲仲良しの友達と旅行に

●留学時代

「英語が聴き取れない?!(汗」それでも尚積極的に英語の勉強を。

海外経験で日本語や日本文化の素晴らしさを知った。

 

日本で短期大学を卒業後、アメリカのメイン州オロノ市にあるメイン州立大学に編入しました。英語力にはかなり自信はあったのですが、いざ渡米してみると全く英語が聞き取れないことに愕然としました(苦笑。

自分の英語力の現実に呆れましたが、気を取り直して数年アメリカに居れば英会話が上達するだろうと前向きに考え、特に最初の2年間は英語力の強化に励みました。自分から隣のルームメイトに声をかけて一緒にご飯を食べにいったり、寮の食堂でバイトをしたり…。聞くは一時の恥、聞かぬは一生の恥と思い、毎日小さなノートを持ち歩いて、会話を途中でとめてでも分からなかった言葉を教えてもらったりしていました。その甲斐あって、友人も次第に増え、とても楽しい学生生活を送ることができました。また大学3~4年時には、大学に通う学生の日本語クラスの先生(アルバイト)をする機会にも恵まれ、日本や日本語について考えることができ、日本の素晴らしさを改めて感じる機会にもなりました。

留学中に年1回程度帰国していましたが、その間に親戚に会うと「海外に行ってから内気だった性格がとても社交的になった」と言われるようになりました。留学前は親戚ともどのように話していいのか分からない…と思ってしまうほど内気な性格でしたが、留学中に様々な国の人と交流をし、自分から発信しないと自分のことを見てもらえない環境が私にとってはとても刺激になったと思います。

 

当初は通訳になりたいという思いで留学を決めましたが、時間とともに経営に関する仕事がしたいと考えるようになり、大学卒業後はデンバー大学院で経営学修士(MBA)を取得しました。アメリカの大学でも大学院でも感じたことは、アメリカ人の勤勉さ。思い切り遊ぶけれど、勉強への姿勢も真剣そのもの。インターナショナルの生徒としてついていくにはかなりハードでしたが、勉強だけでなく息抜きや遊びもしっかり楽しむ生活を身近で見ることができたのは大きな学びとなりました。何より私にとっては、留学を通しての海外での生活で得た考え方や経験、他国の人との交流、現地の日本人のコミュニティで培った友人とのつながり、海外から日本や家族を考える機会は私の人生の宝になったと思っています。

 


▲ファモニィ株式会社ホームページ
▲ファモニィ株式会社ホームページ

●就職、起業のキッカケ、決断―

シンクタンク時代の「女性プロジェクト」活動で起業を決意‼
女性、家族、社会を幸せにする会社(ファモニィ)へ。

 
大学院1年で帰国した時、東京で開催された「ボストンキャリアフォーラム」に参加し、外資系コンサルティング会社で自分を試してみたい、と決意。その後のNYでの面接にも合格し、新卒社員となりました。しかし新人研修後に配属された部署はIT系のSE職。早朝から終電までプログラミングと格闘する毎日で、ニキビに吹き出物…体調管理する暇など無いほど忙しい時代でした。そんな時車内広告で見かけたのが「30歳までに転職‼」の文字。自分がもっと貢献できることに挑戦したいと思い、29歳の今転職するしかない‼と決心したのです。この頃から自分のスキルを活かして起業する想いが芽生えてきましたが、商社系シンクタンクの転職先を得て自分を磨くことに…。

シンクタンクで新規事業開発の仕事を担当し、社内の女性数人で“女性プロジェクト”を立ち上げ、海外の事例や日本でのニーズを調査し、女性向けのサービス開発に向けて取り組んでいました。女性向けのサービス開発を通して、女性にとって、そして家族にとって身近で親しみやすい事業を開発していきたいとの思いが強くなり、「自分でやってみよう!!」と起業を決意したのです。起業に至るまで、会社で働きながら様々なサービスを考えては、実現の難しさを感じて諦めの繰り返しでしたが、考えてばかりいても何も始まらないと、退職を決め一歩を踏み出しました。

 

2009年34歳の時、“家族の生活を豊かにするサービスを提供する”ことを理念に、ファモニィ株式会社(famony Inc.)を立ち上げました。Famonyは「family」と「harmony」の造語で、家族の調和がとれ、家族の幸せが作れることで社会も幸せにしていきたいという想いで名付けました。

 


▲「品川ウーマンズビジネスグランプリ2015」発表
▲「品川ウーマンズビジネスグランプリ2015」発表

●起業後のエピソード―

美容室予約サイト事業の試行錯誤から「ママトコタイム」へ‼
ビジネスコンテストのグランプリ受賞が大きな自信に。

 

最初に手掛けた事業は、平日の昼間はどこの美容室も客足を伸ばしたいと悩んでいることを知り、美容室の予約の空き状況を見ながら、予約ができるモバイルサイトでした。美容室の空き時間は昼間であることが多く、この時間に動きやすい主婦層を取り込むことを狙ったサービスでしたが、グルーポンとかの台頭もあり、早めに事業譲渡という形をとることを決断。最初の事業の際は、準備段階でほとんど情報開示せずに進めましたが、そこから学んだことは、どんな事業も発信をしていくことが重要ということでした。

そんな時、美容室で出会った子連れママ達が「子どもが生まれてから、髪を切りにいくこともできない」と仰っていたことを思い出しました。一次的な保育サービスがあれば、美容室の集客に貢献できると考えたからです。それまでの事業で繋がった美容室に、保育サービスを提案し、試験的にサロンでの保育付きイベントを実施しました。最初は私自身が子守り役として店舗へ向かい、施術を受けるママの近くでベビーシッターをすることを始めてみたところ、確かに需要の手応えを感じたのです。これが現在の弊社のサービス「ママトコタイム」の始まりでした。

 

2015年に「品川ウーマンズビジネスグランプリ」というビジネスコンテストに参加しました。自分の事業を客観的に審査・評価して頂き、その後の事業のブラッシュアップに繋げたいと考えたのがエントリーのきっかけです。当日はとても緊張しましたが、一緒に発表をした方々のプレゼンを拝聴できたことは、自分に足らない検討事項について気づくことができたり、プレゼンの勉強になったりしただけでなく、発表者同士や審査員の方々との貴重なご縁を頂けたことなど、とても実り多い時間となりました。

 

最優秀賞を受賞させていただいたことは、何より自分が取り組んできた事業への大きな自信につながりました。また実際に事業の内容、戦略、目標を紙に落とし、発表をする機会をいただけたことで、自分自身が立ち止まって事業を整理し、今後について再考する良い機会につながりました。それと同時に審査員やプレゼンを聞いてくださったかたからのアドバイスはその後の進め方を考えるキッカケとなり、事業の進め方を見直すことへもつながりました。

 


▲「ママトコタイム」オフィシャルサイト
▲「ママトコタイム」オフィシャルサイト

●今後の夢、目標‼

ママ、店舗様、ファモニィがご縁で繋がる3方良しのビジネス。
「ママトコタイム」開催店舗のエリア拡大へ‼

 

 

赤ちゃんと一緒に美容室や整体院などに行ける、イベント型無料保育サービス「ママトコタイム」を必要とするママにお届けできるよう、1駅、1業種あたり、1開催店舗の展開をしていきたいと思っています。自分の住むエリアにママトコタイムの開催店舗がないのですがという問い合わせをいただくことがあります。ママトコタイムを利用したいと思ってくださっても、移動に2時間かかるところで開催していても利用は難しい。まずは関東での開催店舗を増やしていき、ママトコタイムを必要とするママにお届けできるようにしていきたいと思っています。

また、ママトコタイムを開催する店舗にもメリットがあります。小さなお子さんを連れて来店することが難しい店舗にとって、子育て期のママの顧客数は減少する傾向にあります。来店頻度を下げたり、来店すら諦めてしまったり。ママトコタイムは、プロの保育スタッフが店舗内でお子さんを保育料無料でお預かりするため、ママは安心してお子さんと一緒に来店することができます。それにより、店舗の既存のお客様が出産、育児で来店の足が遠のくことを食い止める効果が期待でき、また、子育て期のママの新規顧客を獲得できる可能性につながります。店舗と子育て期のママをつなげるサービスとして、将来的にはエリア展開、全国展開を目指していきたいと思っています。

 

ママになったら諦めるのではなく、ママになっても“できる!”が当たり前の社会を目指し、ママトコタイムをはじめ、情報発信やコミュニティづくりなども行っていきたいと思います。また、保育士資格を有し、保育への想いを持ちながらも、フルタイムでは働くことが難しい女性や、子育てに一段落をした方たちの新たな雇用創造にも挑戦していきたいです。


 

▼天沼幸子さんの座右の銘  『継続は力なり

ママトコタイムのサービスは弊社にとって2つ目のサービスです。

1つ目のモバイルサイトのサービスで学んだことを次に活かして継続してきたことで、現在に至ります。事業もですが、人生はトライ&エラーの繰り返し。思うようにいかないことが続くと気持ちが下向きになることもありますが、そこから新たな光を見つけることが楽しくもあります。 

自分がうまく進められなかった時は、次に活かすにはどうしたらいいかを考えるようにしています。今でも日々改善しなければいけないことばかりです。しっかりと考え、決断し、次に活かしていくこと、そして継続していけるかが、何かを成し遂げていくには重要だと思い、日々取り組んでいます。




〇ファモニィ株式会社HP  
 http://www.famony.co.jp/
〇「ママトコタイム」オフィシャルサイト  

 http://mama-to-ko.com/

○天沼幸子Facebook個人アカウント
 https://www.facebook.com/sachiko.amanuma



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